一言で足と言っても、付け根から太もも、膝、足首、甲、裏、かかと、指など細かく分かれており、それぞれに痛みやしびれ、腫れなどの症状が現れる原因は異なります。そのため、どこに問題があるのかによって、治療方法や生活上の注意も変わってきます。
たとえば、痛風によって足の指に痛みがある場合と、妊娠が原因で股関節に症状が現れた場合、さらにランニングやウォーキングによってかかとを傷めた場合では、それぞれに全く対処法が異なるのは明らかでしょう。
ただし、共通する部分もあります。たとえば、ウォーキングやランニング、さらにテニスやサッカーのように走り回るスポーツが原因で足の痛みが生じている場合には、事前のストレッチが予防になる点や、肥満気味ならあらかじめ水中ウォーキング等によって適正な体重に戻してからの方が負担が減る点は共通項です。
しびれを伴う痛みが足に生じている時には、原因として糖尿病による神経障害や坐骨神経痛の可能性が高く見られます。坐骨神経痛においては、腰痛を併発することも多く存在します。
とはいえ、それぞれの箇所によって事情が異なる部分が大きいので、足を大きく分けて原因や症状の現れ方、治療方法や生活上の注意点について見ていきましょう。
足の付け根・太ももの痛み
まずは足の付け根に痛みを感じる場合、変形性股関節症の可能性があります。変形性股関節症はその名の通り、関節に変形が生じてしまうもので、そのために炎症が起きるほか、症状が進行するとスムーズに動かなくなりかねません。
他にも女性に多く見られる骨粗しょう症によって骨密度が低くなり、足の付け根の部分に痛みを感じる方もいます。中高年になってから骨粗しょう症は増加します。
これ以外にも、大腿骨頭すべり症や骨壊死、内転筋挫傷等も足の付け根の痛みの原因になりえます。こうした病気のほかにも、単純に柔軟性が失われているために負担が大きくなっている疑いもあるので、ストレッチによって股関節をしなやかに保っておくのも予防になります。
太ももは足の付け根や膝などと異なり、関節はありません。そのため、筋肉や骨に異常が生じている可能性が高いと言えます。たとえば、肉離れや外傷による骨折が代表的です。肉離れは柔軟性の低下や左右の筋力・太ももの前後での筋力のバランスの悪さが原因で生じやすくなります。
激しいスポーツによって体を酷使した結果、太ももの肉離れを起こして、足を押さえて倒れこむ方は少なくありません。バランスの良い体作りを行うと共に、入念なウォーミングアップが求められます。
足裏の痛み
土踏まずには足底筋膜という部分があり、ここが炎症を起こすと足の裏に痛みを生じます。ウォーキングやランニングの途中で症状が出た場合には、この可能性が高いと言えます。
40歳以上になると足底筋膜の柔軟性が失われていく傾向にあるほか、土踏まずが低くて偏平足の方や、反対に高すぎても炎症を起こしやすいとされています。また、マラソンをする方のように長距離のランニングやサッカー等の走る競技をする方に多く見られます。
また、歩き方が悪いと足の裏の衝撃が上手に分散されません。靴の底を見たときに左右で明らかにすり減り方が違っていたり、特定の部分ばかり消耗の激しさが目立つ時には要注意です。本来はかかとで着地し、前方に体重移動をしてつま先で地面を蹴る動作のはずが、歩く時の癖があると特定の部分ばかりを使ってしまいます。
足の裏や土踏まずは歩く際に使わざるをえない部分です。しばらく無理をしていたら、それが災いして歩行にも困る事態になりかねないので、痛みを感じたら症状が治まるまではスポーツを控えたり、安静にして土踏まずをマッサージして休んでおくのも大切な対処法です。
昔と異なり、現代ではほとんどの道路がアスファルトで舗装されているため、安定して歩ける反面で、固い路面のために足の裏に負担もかかるため、異常を感じたら無理をしないようにしておきましょう。
足の甲の痛み
土踏まずのアーチが高い場合には、足の甲が高くなって痛みを感じることがあります。靴の内側に甲が触れやすくなるため、歩くだけでも症状が現れて辛いケースも見られます。外反母趾の方にも同様の傾向があり、体重が上手に分散されないのが原因で甲の一部に負担がかかってしまいます。
この他にも、新しい靴の形が合っていなかったり、なじんでいないうちには足の甲に痛みを感じやすくなり、ヒールが高い靴や長時間の歩行・運動も同様の傾向にあります。病気としては痛風やリウマチも原因になります。
一時的な症状であれば、その間だけ我慢しておけばよいものの、慢性化すると厄介です。靴を履けば、どうしても甲の部分は当たってしまうため、日頃から辛い思いをしなければならなくなります。また、急性の症状では、立ち上がるのも厳しいこともあります。
足首の痛み
歩く時やスポーツの時に大きな負荷がかかる足首は、捻挫やアキレス腱炎・アキレス腱周囲炎、靭帯の炎症、変形性関節症といった原因によって痛みを感じることがあります。
捻挫はランニングやサッカー、バスケットボール等の様々なスポーツの際だけではなく、階段や段差を踏み外して足首をひねってしまうことが原因でも生じます。程度の差はあれ、ほとんどの方が経験しているでしょう。
アキレス腱は足首の後ろにある腱で、時折スポーツの最中に切れてしまい、はっきり音が聞こえるという話も聞きます。断裂まではなくても、負担をかけているとアキレス腱やその周囲の組織が炎症を起こして、アキレス腱炎やアキレス腱周囲炎が生じます。この場合には腫れも伴い、スポーツが原因になっていれば、しばらくは安静にしなくてはならないほか、薬物療法を使用するケースもあります。
変形性関節症は膝や股関節と同様に、足首の関節が変形して炎症を起こすことで生じる病気で、痛みに加えて腫れや水がたまることがあります。初期にはスポーツの際や長く歩いた後に症状が出やすくなります。
足の指・かかとの痛み
足の先端部分に該当する指に痛みや腫れが生じる原因としては、病気としては糖尿病や痛風、慢性関節リウマチがあります。この他にも、日常の習慣が原因になっているケースとしては深爪があります。
糖尿病は痛みのほかにしびれを感じることもあります。症状が進行すると神経障害によって感覚が鈍くなって怪我に気付かずに放置してしまい、感染症への抵抗力が落ちて壊疽を招き、最終的に足の切断を余儀なくされる危険があります。運動療法や食事療法が治療の中心になるため、早めの対応が重要です。
痛風は足の指だけではなく、様々な関節の痛みの原因になります。こちらも食事や飲酒との関連が強い病気であるため、生活習慣の改善が求められます。
慢性関節リウマチは痛みや腫れの症状のほかに関節の変形も伴い、進行すると足の指を含めて色々な関節に症状が広がってしまいかねません。
足の中でもかかとは地面に設置する部分であり、つま先を十分に使わずに後ろに重心を乗せて歩く方であると、通常よりも大きな負担がかかってしまいます。テーピングによってかかとを保護する方法もあるものの、根本的な原因である歩き方を修正するのも重要で、かかとで着地してから前のほうに体重を移動してつま先まで使うようにしましょう。